腸内環境とウイルス感染症について
~健全な腸内細菌叢がウイルス感染をどのようにして防衛するか~

こんにちはKJです。
再放送の仁をみてて思いました。ほんといいドラマだなあって。この作品は村上もとかさんの人気漫画のドラマ化です。最近でこそ医療系のドラマって多いと思いますが当時の医療ドラマとしては秀逸な作品だったと思います。実はこのドラマ、サイエンス的には非常に難解な場面ばかりなのですが、そこを難しい言葉を使わずに、誰にでもわかりやすく表現している。製作者の想いが伝わってきます。あと綾瀬はるかがとにかく可愛い。「なりませぬ!」って言われたいです。
このドラマの舞台は江戸時代後期。
コロリ(コレラ感染症:コレラ毒素産生性菌)と呼ばれる流行り病が蔓延していた江戸にタイムスリップした、現代医学を身に着けた脳外科医が活躍する奇妙キテレツなドラマです。もちろん当時の江戸は蘭学が国内に導入されて間もなく、抗生物質も無いので様々な感染症が流行したそうです。ちなみにコレラ感染症によって江戸では3万人(当時の人口が約100万人)の方が亡くなったそうです。
そんな当時の江戸幕府は洋書調所に命じてフロインコプスと呼ばれるオランダ医師が記した『衛生全書』のダイジェスト版である「疫毒預防説(えきどくよぼうせつ)」を刊行しました。その中には「身体と衣服を清潔に保つ」「室内の空気循環をよくする」「適度な運動と節度ある食生活」などを推奨しているそうで、なんだか現代のコロナウイルスと名前も対策も似ていますね(分類学的には全く異なりますが目に見えないものへの対策としては共通していますね)。
そもそも我々は年中通して様々な感染症にさらされています。
例えば嘔吐、下痢などの急性胃腸炎症状を起こすノロウイルスや2009年に流行した新型インフルエンザウイルス、いつも何型が流行っているかわからない季節性インフルエンザや、なにより誰もが恐怖におびえる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)…
予防が出来ればなんでもしたいところですがこの「疫毒預防説」の特に「節度ある食生活」に関して、感染症と関係があるのでしょうか?答えは「関係ありんす!」キーワードは「腸内環境の良好なバランス」です。
食卓を見渡してすぐに目につくのがヨーグルトなどの乳製品。私も大好きです。近年の健康増進ブームに乗って食品大手各社が独自に保持していた乳酸菌株から機能性のあるヨーグルト等を開発し、その当時はウイルス感染症に効果あり!として有名になりました。そのヨーグルト市場は2016年には4000億円を超えたそうです。このほかにも最近は何でもかんでも乳酸菌を入れる製品が増え、その市場たるや2020年には8,000億市場になるって言われてます。そりゃなんとかして売りまくりたいですよね。
【参考】https://www.agrinews.co.jp/p49444.html。
ちなみにヨーグルトなどの乳製品に感染症予防に医学的な見地から効果があるとされていません。そればかりか医薬品的な効果効能を食品で謳うのは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)違反に当たるため某食品会社は「強さを引き出す!!」とか表現が変わりました。
この乳製品に含まれる乳酸菌とは分類学上の呼び名ではなく、炭水化物などの糖を消費して乳酸をつくる細菌の総称です。実際に私も特殊な寒天培地で培養したことがあるのですが、新鮮なヨーグルトのいい匂いがしますよ。
そもそも人の腸内には約100兆個の細菌がいるとされ、その種類ごとに集団形成をして腸内に存在し複雑な微生物生態系を構築しています。この微生物群を腸内細菌叢(腸内フローラ)と言われ、顕微鏡で見るとお花畑(フローラ)に見えることからこの名が付きました。この中には優用菌もいれば有害菌もいて、ながーい腸内にそれぞれ住みやすい場所(酸素の濃度であったり細胞の形状)に落ち着いています。この乳酸菌などは有用菌に属し、腸内にすむ細菌のバランスを整えることにより、健康に役立っています。
詳しくは割愛しますが、これら乳酸菌などの有用菌は人に様々な恩恵をもたらしてくれるんです。例えば人では作り出すことのできない栄養(揮発性脂肪酸など)を作り出してくれたり、メンタルヘルスにも関わっていたり、感染症に対する免疫系の強化に大きく関わっていたり等々…。まさしく腸内環境の健全化は現代社会に生きる我々にとっての健康維持に特に重要ですね。
でも実は乳酸菌やビフィズス菌などの有用菌は腸内細菌の中でも少数派で加齢に伴いどんどん減少することが知られており、この変動していく腸内環境のバランスを保つことが重要になります。
【参考】https://www.morinagamilk.co.jp/download/index/17758/160526.pdf
こんな論文も発表されています。
九州大学の研究グループは、マウスのインフルエンザウイルス感染モデルを用いて、ある特定の腸内細菌がインフルエンザウイルスに対する上気道(つまり鼻とか喉にかけての辺り)での粘膜免疫応答の誘導に重要であることを明らかにしたそうです。これは腸内細菌が、腸内環境だけでなく、距離的に離れた上気道や肺での免疫応答の誘導にも重要な役割を果たしていることを示した研究成果です。どんな種類の腸内細菌かと言うと、「グラム陽性菌」と呼ばれる細菌がインフルエンザウイルスに対する免疫応答の誘導に役立っていることが示唆されたそうです。ちなみに「グラム陽性菌」の例としては乳酸菌やビフィズス菌が知られていますが、悪い病原菌としても知られるジフテリア菌やブドウ球菌などもグラム陽性細菌なんですよね。この「グラム陽性菌」に関しては別の機会でお話ししたいと思います。
この論文ではグラム陽性細菌の中から更に特定することを行っていませんが、いずれにしても腸内環境のバランス維持がウイルス感染へのかかりやすさに関与していることが分かったんですね。まだまだ新型コロナウイルスに対してこれらに関わる科学的な知見は無いですが、我々がアフターコロナ、ウィズコロナ時代を生き抜くためにも腸内環境の健全化という観点を持ち続けることは非常に重要だと思いますが、ではどのようにして腸内環境のバランスを維持すればよいのでしょうか?乳酸菌をいっぱいとればいいの?ヨーグルト食べまくればいいの?
それにはやはり「節度ある食生活」が重要なんです。
質問ですが、ヨーグルトの中に一体どの程度の乳酸菌類が入っているでしょうか?各社違いはあると思いますがヨーグルト1カップ(約100g)当たり乳酸菌で約100億から1,000億個、ビフィズス菌で数億から100億個存在しているそうです。しかし、一見かなり多そうですが実は腸への定着率は非常に低いとされています。まず胃酸でその数がかなり減少し、ようやく腸に入ってきても便として排出されてしまうのです。これは農業と一緒でまずはその土壌を安定させなければならないのです。
【参考】参考 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/24/2/24_118/_pdf
そこで、 29種の乳酸菌の他、乳酸菌のえさとなる様々な要素が入った「 Be Qtto」を毎日1粒食べるだけで腸内環境を整えること間違いなし!!